交差点への後退進入による逆突事故、過失割合は?

目の前で起きた交通事故(物損)がレアケースだったので紹介したいと思います。

 

 

図上右から左に走行していた軽自動車(赤)が180度方向転換のため、一旦一方通行路に右折(上方向)で進入。その後切り返してバックで再び交差点に進入したところ、左方向から来た普通自動車(青)に衝突。いわゆる逆突事故が発生しました。

 

まずこの事故とは関係なく、基本的な考え方から。

 

前を走っている車が急ブレーキを掛けて後続車が追突した場合基本100:0で追突した側の過失というのは皆さんご承知のとおり。

同様に、バックした車が後続車に衝突した場合は追突ではなく逆突となり、これも基本100:0でバックした側の過失。追突で自分や相手が動いていたかどうかが関係ないのと近いレベルで、逆突でも自分や相手が動いていたかは関係ないとされる。よく「双方が動いていたから一方的に過失ゼロとはならない」としたり顔で主張する加害者がいるが、そういうふざけた事をいう奴は死ねば良いと(!?)思う。

 

余談ですが駐車場内等、他車がバックしたりすることがあらかじめ予見できるような場所での逆突事故の場合、ぶつけられた側が回避しようとしたか否かが問われて90:10とかになったりする事もあるので注意。まあこれは100:0だとぶつけられた側の保険屋さんが交渉に介入できない決まりになっているので、過失を1割受け入れる代わりに示談交渉から何から保険屋さんに丸投げできるというメリットもあるので一概に損とは言えない。

 

さて今回の事故は逆突とはいえ交差点内での事故となります。個人的には交差点にバックで入ってくるような奴は死ねば良いと(!?)思うのだが(昔信号無視&交差点にバックしてきた大型タイヤショベルに殺されそうになった経験があるので)、どうも判例を調べてみると意外や意外。逆突の事実より交差点内での事故という要素を勘案した判決が出ていたりするのだ。それでもバックしている側にはより慎重な注意が求められるのは事実なので、過失としてはバック側が不利になることには違いが無い。

 

そして今回の事故の場合、一方通行道路にいったん進入した軽自動車がバックしてきて普通車に衝突しているわけで、普通車側からすれば一方通行の走行禁止側から車輌が来るのは想定外なので「逆走じゃないか!」と怒りたくなる気持ちは当然だろう。

 

ところがこのような一方通行道路の場合でも、単純にバックするのがすべて違法になるとは言えないようだ。もちろんUターンして走行するのは当然違法だが、進行のため以外の後退(縦列駐車など)まで違反にするのは無理があると言われてしまうと、なるほどといわざるを得ない。そしてこの事故の場合バックした交差点の先(つまり下側)は確かに進入禁止の標識が提示されているが、このバックしてきた軽自動車はその手前で後退左折をしているので進入禁止の違反はしていない。つまり逆走にはならない可能性が僅かにではあるが残っている。

 

そうなると万が一バックしてきた軽自動車側があれこれと知恵をつけて後になってから「自分は衝突の直前に止まった」だの「相手は一時停止線を越えている」だのと言い出すと面倒なことになりかねない。そこで明確な点だけを挙げて過失修正を考えてみることにします。

 

まずこの場所が仮に一方通行路で無かったとして、見通しの悪い交差点では優先道路であろうとも右左折車双方に徐行義務があるので基本は60:40で一時停止側の普通車の過失が大。

 

次に衝突の位置関係。軽自動車の衝突時の進行方向、角度から考えると仮に普通車が停止線で停止していたとしても明らかにコースとしては衝突コースを走っている。なのでこれは交差点右折時の「早まわり右折」となり、軽自動車側に過失修正が+10となる。

 

同様に切り返しという行為を交差点で行う場合もあくまで右左折という行為の延長線にあるので、右でも左でもウインカーを点滅させないとならない。合図なしなので軽自動車側に過失修正+10.。

 

判例タイムズに記載はないのだが、保険屋さん同士で適用する「バック修正」(後退する側の過失)を適用して軽自動車側に+10。

 

ここまでで軽自動車側70:普通車30の過失割合。しかしこの計算は「逆突ではない」「逆走でもない」と、軽自動車側にありとあらゆる有利な判定をした場合でさえこうなるというものであり、いくら一方通行側が優先道路だからといっても、この道路は図上で下から上方向への一方通行道路で、その状態で上から下、つまり普通車側からみて左方に存在する車輌が、何の前触れもなくバックしてくるという想定外の事象にまで注意義務を課すのはあまりに無理筋すぎるでしょう。

 

なので70:30の修正要素のどこかに「重過失」を加えて80:20。どんなに軽自動車側の任意保険会社に悪魔的才能があったとしても、これ以上軽自動車側に有利な判定は出せないと思います。

 

もちろんいうまでもなく、常識的に考えればこんな事故は100:0で軽自動車側の全過失ですよ。

 

事故現場で軽自動車を運転していたお兄ちゃんに、私は「どんなに頑張っても80:20、普通は100:0」だよと告げたのですがなにか不満そうだったので、あらためて整理して考察してみました。

 

ちなみにこの交差点は地域住民の間では「魔の交差点」と恐れられており、何故か一時停止を無視してフル加速で交差点を突破していく車輌が多いのです。

 

まあ対面通行二車線道路と交差する側が一車線の狭い道路なので、普通は二車線側が優先と思いたくなる気持ちもわかるのですが、この交差点に潜んでいる魔はそれだけではなさそうです。

 

去年も一時停止を完全無視して交差点に進入した地元おばちゃんの自転車が、一方通行路を普通に走行してきた自動車に轢かれて骨折する事故がありました。

 

その時私は救急車が到着するまでの間現場の交通整理をしつつ、おばちゃんに「左から車が来ていたの見えていたでしょ?どうして一時停止しなかったの?」と質問してみました。その時おばちゃんから返ってきた答えがあまりに秀逸すぎて、今でも忘れることができません。

 

「だって、いっつも車のほうが止まってくれるんだもん」

 

・・・当たり屋かよ!(笑)

この記事について、私のアメブロは提供先でこちらの記事がオリジナルです。

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