センスのないライダーが説く峠ライテクその1「スロットルを開けて曲がる」

はいどうもバイクのライディングセンスが絶望的に無いケインです。バイクってセンスがある人が乗ると、経験理屈関係なく速いし上手いんですよね。その歴然としたセンスの差というものは理論では超えられません。なぜならクルマと違ってバイクは感性で乗る乗り物ですから。でもそこを少しでもなんとかしたいという、私と同じ悩みを抱える全国100万人のライダーに贈るライテク講座の記念すべき第1回です。第1回で終わるかもしれませんが。

なお予め申し上げておきますが本稿のターゲットはストリートを気持ちよく良くぶっ飛ばしたい層であって、ジムカーナやサーキットの方々は想定外ですのですみやかにブラウザバックをお願いします。

さて、バイクとは何故曲がるのでしょうか。極論で言います。大抵のスポーツバイクは前輪が後輪より細いですが、そうなっていることでバイクをバンクさせたときに前輪の方が後輪よりキャンバースラストの力が強く働き、結果として後輪よりも前輪のほうがより内側に転がっていく現象が発生するからです。もしも前輪のタイヤのほうが太いバイクがあったとしたら、多分ものすごく曲がらなくて乗りにくいと思います。

これがクルマと大きく違う点です。クルマのフロントタイヤは基本太ければ太いほどよく曲がります。曲がる仕組みが違うのでクルマのドラテクとは全く別物として考えなければいけません。具体的に言うとクルマでのコーナリングの基本、フロント荷重という考え方はいったん捨ててください。

ではバンクさせればなんでも曲がるのか、というとそうでもありません。比較的昔のバイクのほうがその傾向は顕著で、最新のスーパースポーツだとあまり意識しにくいかもしれませんが、古今東西バイクという乗り物は基本的にコーナリング中スロットルを開けていないとダメな乗り物なのです。タイヤと車体の進歩がその基本を相当ボヤかしてしまっていますが、昔の人がよく言う「うまくなりたかったらオフロード車に乗れ」というのは、そのことをズバリ指し示しているのです。

では何故バイクはコーナリング中にスロットルを開けていないといけないのか、図で示してみましょう。

赤色の矢印はスロットルを開けたときにフロントタイヤに掛かる力です。それを分解すると青色の矢印のようにフロントタイヤを持ち上げようとする力と、フロントタイヤをコーナー内側に運ぼうとするオレンジ色の力のふたつに分かれます。

こうしてみると、フロント荷重が抜けていたとしてもオレンジ色の内側に曲がろうとする力が強いため、フロントタイヤが滑ることなく安定してコーナリングできることがお分かりいただけるかと思います。リアタイヤが太いのは、このようにトラクションを掛けてコーナリングしている最中にリアタイヤが滑らないようにするためのものでもあるのです。

もっと直感的にわかりやすい説明を試みるなら、直線道路で1速2速でスロットルを急激に全開にした状態をイメージしてみてください。パワーのあるバイクなら軽々とフロントタイヤが浮きます。それがコーナリング最中に起きているのが赤色の矢印です。もちろんコーナリング中にウイリーするほどパワーを掛けたら今度は後輪がギブアップして滑ってしまい転倒しますので、スロットルを開けるというよりも当てる、つまりわずかに加速する程度で抑えておくというのが肝心です。

ではコーナリング中にブレーキを掛けたり、スロットルを閉じてエンジンブレーキを効かせたりするとどうなるでしょうか。

フロントタイヤの傾きと同じ方向に、赤い矢印の下向きの力が発生します。それを分解するとひとつは青い矢印の前輪を路面に押し付ける力、もうひとつはコーナリング方向とは逆向きに前輪をずらそうとするオレンジ色の力になります。上級ライダーはほぼフルバンク中でもこの力をコントロールしながら減速しつつコーナーに入る、一次旋回という技をうまく使いこなしますが、これは失敗するとフロントタイヤが滑って確実に転倒するという非常にリスクの高い技です。

なので私のようなセンスのないライダーは、基本的にコーナー手前までにきちんとブレーキングを終えて、スロットルを開けながらスムーズにコーナリングする二次旋回をメインに使っていくほうが安全なのです。

今回のまとめは、バンクしている最中は極力ブレーキを掛けたりスロットルを閉じたりせず、常に加速感(トラクション)を意識してコーナーを曲がる、です。賛否両論あるかと思いますが、サーキットやジムカーナではまた別の技術体系があるのでよほど異論を唱えたくて我慢がならないという人以外は技術的なご指摘はなるべくご遠慮ください。そして今回説明できなかったセンスのないライダー向けのライテクはまだまだありますので、応援のコメントはどしどしお寄せください(笑)

ではまた気が向いたら次回。余談ですが今年の6月14日は晴れるといいなあ。その日はともちゃんの一周忌なので、老体に鞭打って小樽の毛無山の事故現場まで行ってくる予定です。天気が悪そうだったら6月13日にしますが。もしも私に気がついた人がいたら、遠慮なく声を掛けてくださいね。

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