ツインターボというノスタルジー

乗りものニュースさんに、興味を引く記事が掲載されていました。

 

「ツインターボ」を聞かなくなったワケ

https://trafficnews.jp/post/75089/

 

要約すると、ツインターボはターボが2個も付いているから速い!

でも最近は高性能スポーツカーが減ってきたのと、シングルでも技術の進歩で低回転域でも高回転域でもパワーが出せるようになったのです、と。

しかも時代の流れはハイパワーではなく燃費。なので現在はダウンサイジングターボが主流となってきているが、それもこれから燃費計算方式が変わるため、ターボ車は不利になる恐れが・・・なのでターボ自体が廃れるかも。求められるものが変化すると、使われる技術も変わるというわけですネ!というお利口さんなニュースです。

 

うーん。ヒネクレもののケインは考えてしまいます。

 

日本におけるツインターボの一大ムーブメントというのは1986年(昭和61年)以降、トヨタが20ソアラや71マーク2の2000ccグレードに1G-GTEというツインターボエンジンを載せてしまったことから始まっています。

あのころはバブル最高潮。ターボでもなんでも数が多ければ偉いみたいな風潮があったんだと思います。勝手な想像ですが。

 

ソアラならまだわかります。当時のトヨタのフラッグシップモデルですから。しかし何故おとーさんが家族とドライブに出かけるために買うマーク2やクレスタ、チェイサーにツインターボモデルを用意したのか?当時としてはまったく意味不明としか思えない采配だったのですが、これがまた結構売れてしまったので以降の国産4ドアセダンの方向性はちょっと面白いほうにシフトしていきます(笑)

 

ツインターボ自体はその後日産からも32GT-R用にRB26DETT、そして32Z用にVG30DETTが世に送り出されました。32Zに関して言えば片バンクにターボ、インタークーラー、スロットルがそれぞれひとつずつ用意されているという、ある意味理に適ったツインターボですが、GT-Rに関してはレースを見越したツインターボだったのです。

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少し補足します。

一般的にツインターボのメリットはシングルターボより小さいタービンを2個回すことで低回転から高回転までターボラグのない加速が得られるとかなんちゃらというのが定説だと思うのですが、市販車として許される低回転時のブーストの立ち上がりをシングルターボで達成しようとすると、かなり小さめのタービンになってしまいます。いえいえ、もちろんツインターボのタービン1個よりは大きいですよ?しかしターボとしては小さくせざるを得ないんです。そうしないとお客様から「加速しない」「遅い」「どっかんで乗りにくい」などと超お叱りを受けてしまいますので。

その点ツインターボだと元々は小さなターボふたつですが、なぜかブーストを1キロ以上に上げてやると小さいタービンのシングルターボの同じブースト圧よりパワーが出るんですね。まあこれにはきちんとした理由があって、説明すると本1冊くらい書けそうな長さになるかもしれないので割愛しますが、32GT-Rの場合は特にレース参戦が最初から目的でしたので、シングルターボで280馬力を出すのは簡単ですが、それよりも同じ280馬力で伸びしろの大きいツインターボを選択したというのは市販車としての乗りやすさとレース時のパワーアップという相反する要素を両立させるのには必然とも言えます。

 

そのあたりの構図は次世代のトヨタのツインターボエンジンの流れを追いかけていくとなんとなく見えてくるものがあるでしょう。まずトヨタ3000GTとさえ呼ばれた70スープラ。これのマイナーチェンジモデル(後期)から、2500ccツインターボエンジンの1JZ-GTEを搭載したスープラがラインナップされます。このエンジンは最初からセミ鍛造ピストン、メタルヘッドガスケットなどが組み込まれておりもう「んー?自主規制の280馬力じゃつまらないだろう?ほれほれ、ブーストを上げてみな~」といわんばかりのエンジンでした。実際コンピューターをポンと取り替えた仕様でブースト1.1キロ、320馬力なんて楽勝、さらにインジェクターと燃料ポンプ、インタークーラーを大型化した場合は最大でブースト1.5キロ、350馬力オーバーというスペックを誇っていました(ただし純正ツインターボのタービンはブースト1.5キロだと耐久性がガタ落ちです)。この1JZ-GTEはまたしてもJXZ81、90マーク2三兄弟に搭載されますが、JZX100マーク2以降は大幅な変更が行われました。シングルターボ化です。

 

エンジン形式自体は1JZ-GTEそのままなのですが、エキマニのレイアウトから可変バルタイから何から何まで変更されてしまったこの純正シングルターボエンジン。確かに低速からのトルクの盛り上がりは従前のツインターボよりもはるかに力強いです。カタログスペックも280馬力のまま。しかーし!このシングルターボのタービンはレスポンスを重視したために、あまりにもハイブーストに弱かった!!そして高回転時のトルクもついてこない!そして無理矢理ブーストを1キロ以上掛けるともれなくタービンブローするという嬉しくないおまけつき。「こんなことならツインターボのままのほうが良かった・・・」というのは当時よく言われた話です。まあこの話には続きがありますが。

 

この流れを見ていただくと、ツインターボは比較的下から上まで満遍なくパワーを引き出せる、シングルターボは狙いを定めたレンジでは高性能だが、上から下まで全域パワフルというわけには行かない、という印象になりますね。じゃあやっぱりツインターボのほうがいいんじゃん!?と思うでしょ。そうなんです、そう思った人が当時たくさんいました。主に自動車メーカーの人たちです。

 

「どうせツインターボにするのなら、タービン一個は小さいタービンにして低回転からびんびんにブースト掛かるようにして、もう一個は高回転時用にでかいタービンにしておけばターボラグとか関係なく上から下までご機嫌なんじゃね?俺天才!?」

 

それを後世の人々は失われた技術、シーケンシャルツインターボと呼ぶのでありました。

(次回「シーケンシャルターボの盛衰」に続く)

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