GRヤリスの4WDシステムとRCオプションのトランスファー詳細解説(1)

前回、前々回に引き続きGRヤリス特集です。GRヤリスの4WDシステムを調べていくうちに雪道や凍結路では機械式LSDが必須ということがわかってきました。また、RC専用オプションのトランスファー(等速トランスファー)についても詳しいデータが判明したので併せて解説していきます。

フルタイム4WDがセールスポイントのGRヤリスですが、LSDが入っていない無印RZとRCのLSDオプション選択無し(オープンデフ)では雪道や凍結路でスタックした場合4WDではなくただのFFになってしまうことがわかりました。下の図をご覧ください。GRヤリスの駆動系の概略図及び、深雪に乗り上げたり凍結路面で完全にスタックした場合の各部の働きの概略図です。

GRヤリスの場合、エンジンから発生した回転はミッションを経由して最初にフロントデフに伝達されます。ここでフロントデフがLSDではなくオープンデフだと、スタックした時の状況によってはフロント1輪のみが空転してしまいます。そうなると前後駆動輪をつなぐトランスファーが一切回転せず、プロペラシャフトも回っていないためITCC(電子制御カップリング)がいくらロックを掛けようとも後輪には一切駆動が伝わりません。
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このことはトルセンLSDにも言えることで、泥濘路くらいならまだ大丈夫だと思いますが、深い新雪に突っ込んで腹下に雪を抱えてしまうような状況で完全にスタックしてしまうと、トルセンLSDの性質的に上の図と同じ状況に陥る可能性があります。少しでも駆動トルクが掛かる状態なら問題ないのですが、スタッドレスタイヤでは路面の相性によって駆動トルクが全く掛からないことがまま起こり得るので・・・

ではRCオプションの機械式LSDならどうかというと、トルセンとは違ってLSDのイニシャルトルクの分だけは必ずフロントタイヤが両輪とも回転します。回転さえすればトランスファーも動くのでリアにも駆動が掛かります。つまりどんな状況でも4輪とも回転することとなります。

一般的なスポーツ4駆の電子制御センターデフ方式であれば、最悪でもフロント1輪、リア1輪は回転するのでスタックに対して強いのですが、GRヤリスのアクティブトルクスプリット4WDシステムはあくまで走行中のトラクションを追求したシステムであり、雪国でよく起こる速度ゼロのスタック時にはあまり有効ではないということがわかります。

それを解決する手段は一つの方向性しかありません。RCを購入してディーラーオプションの前後機械式LSDを装着するか、フロントだけでもクスコやOS技研から発売される機械式LSDを装着するかのいずれかです。雪道のスタック対策に的を絞るのであればLSDのイニシャルトルクは高いほうが絶対に良いです。クスコのタイプRSLSDだと、出荷前に指定すればイニシャルトルクを設定するRSスプリングを増しマシにできる筈なので個人的にかなりお薦めです。私もFRのリアデフでRSスプリング全増しにしたことがありましたが(クスコさんからはあまりお勧めできないと言われましたけれど)何の不具合もありませんでした。

長くなったので、等速トランスファーなどについては次回解説したいと思います。

GRヤリスの4WDシステムとRCオプションのトランスファー詳細解説(1)” に対して7件のコメントがあります。

  1. 匿名 より:

    トランスファーの後にフロントデフがあるので前輪の型輪が空転してもリアには駆動がかかります
    むしろLSDの付いていないセンターデフ式の4WDのほうが1輪浮いてしまうと他の3輪には駆動がかかりません

  2. unlimitedracingjapan より:

    >>匿名さん
    下手くそな図で提示したとおりフロントデフの後ろにトランスファーがあるのですが・・・?
    もしおっしゃっているような4WDシステム解説の画像があるのでしたら、是非教えて下さい。

  3. 匿名 より:

    こちらをご覧下さい
    https://mobilecafe.tokyo/pictures/image349.jpg
    トランスファーはフロントデフのケース側に接続されています
    右前のドライブシャフトは中空になっているトランスファーの中を通っています

  4. unlimitedracingjapan より:

    >>匿名さん
    そのサイト(https://mobilecafe.tokyo/GRFOUR.html)は以前に何度も読みましたが、匿名さんと私では解釈が違うようです。
    その解釈でいくと、フロントデフにトランスファーが刺さる特殊な構造になっていないといけませんが、私の知る限りGRヤリスのフロントデフは通常のデフ形状です。
    こんなような画像で、もっとおっしゃっていることがわかりやすいような画像はないですかね?
    https://stat.ameba.jp/user_images/20201218/20/area86tcn/40/40/j/o1706096014868340424.jpg

  5. 匿名 より:

    返信ありがとうございます
    クスコのページに写真がありました。
    https://www.cusco.co.jp/products/images/GR-YARIS-CUSCO-LSD-img1.jpg
    Frはデフケースの右側の外径にスプラインが切られており、トランスファーと勘合します。
    (もちろんRrデフにはスプラインはありません。)
    写真では見えませんが普通のLSDと同じようにFrのドライブシャフトは内部のサイドギアに刺さる構造になります。
    もし右前ドライブシャフトにトランスファギアが直結されていたら左右のトルクバランスが左に寄るためまっすぐ走りません。
    デフの両アウトプットシャフトは等トルクになるため右側だけからリア分のトルクをとってしまうと左前のトルクが大きくなりすぎるため。まっすぐ走るのも困難かと。。

  6. 匿名 より:

    https://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/1275/214/html/059_o.jpg.html
    トランスファー側とミッション側の画像、LSDの画像を見ると、LSDとトランスファーの間にメス‐メススプラインの中空のインターミディエイトシャフトを介して接続されていると思います。

  7. unlimitedracingjapan より:

    >>匿名さん
    わかりやすい画像をありがとうございます、本当ですね!まったく勘違いしていました。
    大変勉強になりました。

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