オートウェイ事件、粗悪ホイールの基準とは?

こんにちは、バーチャル車屋のケインです。巷で話題になっている「オートウェイ事件」ですが、前回解説しましたJWLマークとVIAマーク関係に続きまして、

http://www.unlimitedracingjapan.com/blog/2019/11/13/jwlviamark01/

今回も粗悪ホイールの定義とは一体なんぞやという観点でお話をしたいと思います。JWLマークが付いていれば安全安心と思っている方は前回の投稿もぜひご覧ください。

 

まず日本の法律、具体的には道路運送車両法の保安基準にてアルミホイールについての基準が定められております。道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第89条2においては「自動車の走行装置は堅ろうでなければならない」、同3項には「(JWLマークが刻印されているホイールについては)堅ろうとされるものとする」と規定されています。

JWL適合の基準については「別添2 軽合金製ディスクホイールの技術基準 」にて詳しく定められていますが、超ざっくばらんにこれを解説すると「曲げたり叩いたりして製品の強度が確認できたものにはJWLマークを刻印していいよ」というもので、その試験をするのはホイールの製造業者自身です。

つまりJWLに適合しているかどうかというのはいちいちユーザーが証明するものでもなく販売業者が証明するものでもなく、そのホイールの製造業者が信頼できるかどうか、その一点にすべて委ねられているのです。

例えば「このホイールはBBS製だから大丈夫だろう」とか「これはブリヂストン製のホイールだから安心だ」とか、もっと極端に言えば「聞いたことのない中国のメーカーだからこれは怪しいんじゃないか?」とか、判断の基準はあくまでもユーザーが自分自身で行うことになっているのです。車検の合否もあくまでJWLマークが付いているかどうかだけの判定です。
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こういう説明をするとこのあたりから「そんないい加減なことで良いのか!」と義憤に駆られる人が出てきます。そんな人のために、もう少しグローバルな視点で語ってみます。

日本の道路を走っている自動車は日本製の車だけではありません。当然世界各国で製造された外車も日常的に走っています。

現代の日本車のアルミホイールの規格はだいたいPCD114.3か100、そして4穴か5穴でほぼ統一されています(レクサスは別ですが)。ですが世界にはそれ以外の規格も多数存在します。例えばポルシェ。pcd130の5穴です。ポルシェ純正ホイールは、車体とセットで型式認定を受けているのでJWLマークが無くても車検に通ります。具体的にはセンターキャップに「ポルシェ」と書いてあればポルシェ純正という認識だそうです。逆にセンターキャップが無いホイールだと「純正かどうかわからないから車検不適合」という珍事も発生しているのが現実です。

さらに突っ込んでポルシェ用社外ホイールはどうでしょうか。日本市場向けに用意されているオプションのホイールあたりはJWLマークが刻印されているそうです。しかしポルシェベースのカスタムメーカーであるRUF社(トヨタで言えばTRD、日産ならNISMOみたいなもの?)はホイールも作っていますが、ポルシェ純正ではないためポルシェにそのホイールを履くと車検には通りません。もちろんRUFホイールはドイツ国内の安全基準を満たしている高級ホイールです。

「だけどJWLマークが無いんだから日本の車検に通らなくて当たり前じゃないか!」という意見も出てきそうですが、考えてみてください。世界中の有象無象の社外ホイールメーカーに、わざわざ日本の法律に適合させるためだけにJWLマークの刻印を義務付けるつもりですか?そういうのを何と呼ぶかご存知ですか?それは非関税障壁と言うのですよ。なのでそうならないようJWLマークが無いホイールでもアメリカのホイール規格である「SAE J2530」マークは車検においてはJWLマークと同等の扱いを受けています。そりゃアメリカ様の作る商品に「JWLマークが無いからダメ!」なんて言っちゃったら、経済報復されますからね。

とまあアメリカだけは特例扱いされていますが、じゃあイギリスのホイール規格はどうなんだ?フランスは?イタリアは???となるわけです。JWLマークが無いホイールだから粗悪ホイールだとか、安全でないホイールだとかという考え方がそもそも間違っているのだと私は思うのです。

じゃあJWLマークが付いていれば絶対安全か、というとこれまた実はそうでもないのはスポーツ走行用軽量ホイールを履いたことがある人ならば結構知っている話です。ぶっちゃけた話、軽いホイールは割れます、それが現実です。新品時にJWLの基準に適合していたとしても、使用過程のダメージや経年劣化などで安全性を満たさなくなる事があるというただそれだけの話であり、誰かが悪いわけではありません。

さてここでようやく話がオートウェイに戻ります。

オートウェイが販売していたホイールは「MADE IN CHINA」です。BBSを偽装して「MADE IN GERMANY」を謳っていた訳ではありません。もしそうだと商標権侵害で逮捕されている筈だからです。あくまで今回の容疑はJWLマークを利用した誤認惹起です。

警察はもしかするとオートウェイ自身が粗悪ホイールの製造に加担していたと判断しているのかもしれません。それはこれからの捜査で明らかになっていくことだと思うのですが、現時点ではオートウェイがホイールを作っていた訳でない事は明白な事実です。だってMADE IN CHINAですもの。中国のホイールメーカーが勝手にJWLマークを刻印して、そのホイールをオートウェイに売った。そこの当事者同士の間でどんなやり取りがあったかまではわかりませんが、叩かれるべきは中国のホイールメーカーであって、現時点でオートウェイを叩いている人は感情論で叩いているとしか思えません。

いや、もしかすると国産タイヤよりはるかに安いアジアンタイヤを販売しているオートウェイ潰しを目論んだ巨大組織の息が掛かっている人かもしれないと勘ぐってしまうのは私だけでしょうか?

ホイールだろうがタイヤだろうが、消費者には商品を選択する自由があるはずです。自動車の安全性はホイールだのタイヤだのの単品の良し悪しではなくメンテナンスを含めたパッケージとして語られるべきです。私ならBBSのホイールを履いている時なら段差でジャンプするのも平気ですが、例えば中国製偽BBSとか(JWL適合でも)軽量スポーツホイールならジャンプは止めておきます。それが使い分けというものです。

ケインは相変わらずオートウェイを応援しています!

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