10万キロ走行の車でもATF交換&フィルター交換でリフレッシュ(下)

前編はこちら

10万キロ走行の車でもATF交換&フィルター交換でリフレッシュ(上)

後編です。

前回の走行10万キロオーバー、ATF交換をどこでも断られてしまったという三菱トッポbJの4速AT車のATF交換作業の続きになります。

 

問題山積みで微妙なリコールすら掛かった三菱の4速AT。そのリコール内容とはバルブボディ内部のアルミ製バルブ押さえキャップの破損です。

 

 

なんだか小難しいことが書いてありますが、要するにストッパプラグという名前のバルブを押さえているアルミのフタが割れて脱落するということです。ちなみにこんな部品です。

 

注:画像はイメージです(笑)

サイズは一円玉くらいの小さなアルミ削りだし部品なのですが、こいつが割れるとAT内部で油圧がリークしたり、割れた破片がおかしなところに引っかかったりして変速不良を起こすことがあるのです。

 

ちなみにこの部品、三菱からは単品供給されておりません。リコールの説明にも書いてあるとおり割れていなければ動かないように固定して割れるのを防止、変速不良が起きていて原因がこいつだとバルブボディ一式交換というとんでもないことになります。なおリコールの対象外だったり、年数が経過していて自腹で交換となるとバルブボディ単体だけで新品価格6~8万円くらいのお値段となっております。一円玉が6万円、ものすごい世界です。

 

さらに話をやっかいにしているのは、割れていても絶対にATの変速不良が起こるわけでもない、という事です。こればっかりは運の世界、変速不良が起きていたらまずはこいつを疑えという感じです。

 

前置きが長くなりましたが、今回作業しているトッポBJの車輌自体には変速不良の症状等何もありません。しかし私の超能力的予想としては多分この部品、割れているだろうなと思っていました。それで抜いたATFの中とかオイルパンとかATFフィルターとか、疑わしいところを注意して捜索したのですがそれらしい破片は出てきませんでした。それで「大丈夫だったのかな?」と考えていたら、なんとバルブボディとオートマミッションケース内側の隙間にそのストッパプラグの破片が絶妙な位置に挟まっていました!

 

そこでその破片を取り出そうと試みたのですが、隙間が絶妙に足りなくてうまく落ちてきません。まあ落ちるような状況だったらとっくに落ちていてATFフィルターにでも引っかかっていたのでしょうから納得といえば納得です。しかし割れたパーツをATの中に放置するわけにもいかず、結局バルブボディ本体を少し外して取り出しました。その貴重な画像(?)がこちらです。

 

 

古き言い伝えは真であった。汝、三菱の過走行軽自動車の4速ATを見たら破片を探せ、と。

 

しかしこの車輌自体はATの変速不良は起きていないので、バルブボディ側に残っている片割れのほうがまだ上手く油圧漏れを防いでいるのでしょう。今回はとりあえずこの破片は見なかったことにして(嘘)そのまま作業を続けます。

 

まずオイルパンを綺麗に洗浄して、

 

 

ガスケットとATFフィルターを新品に交換してから車体に組みつけてみます。

 

そして抜いたATFの量からおおよその補充量を算定して(今回はオイルパンとバルブボディも外したので3.6リットルも抜けました)、お客様がお持ち込みになったエネオスブランドのATFを入れます。

 

しかも補充にはお客様が持ってきてくださったトキコのオイルサーバーを使わせていただいて超らくちんに作業させていただきました。私も欲しいです、これ。誰か私にプレゼントしてください。動画は誰か知らない人の参考動画です(笑)

ちなみに当店にもATFの在庫はあります。アイシンのAFW+です。これはトヨタ、日産、マツダなどの国内メーカーどころかアウディ、フォルクスワーゲンにBMW、プジョー、シトロエンなどなど世界中のATを作っている業界最大手のアイシンが販売している「CVT以外のトルコンATにはだいたい使える感じ(微妙)」の世界最強?ATFです。ロシア人も大絶賛です。このひとが誰かは知りませんが(笑)

ところがお客様がお持ちになったENEOSのATFはネットでどれだけ探しても適合車種一覧が出てきません。まあ大丈夫だとは思ったのですが、一応ENEOS本社に電話して聞いてみることにしました。

 

するとこのATFはENEOSではなくJXTGエネルギー㈱という関連会社が製造しているとのこと。なので今度はそちらに電話してみると驚愕の事実が判明。なんとこのATFの適合車種一覧は一般には公開していないとのこと!マジですか!!

 

でも車種別の適合なら個別対応しますよということで教えてくれました。トッポBJはOKでした。まあ一般的なトルコンATですから大丈夫だろうとは思っていましたが一応念のために・・・ね。

 

ATFを補充したら一度レベルゲージでだいたいの油量を確認して、一度エンジンを掛けたままシフトポジションをNにして(パーキングの位置だと三菱のこの手のATはATFがバイパスされてしまうので正確な油量が判別できません。ちなみにべらぼうな長時間パーキングでアイドリングを続けているとATFクーラーにATFが回らないのでATのトラブルの原因になると指摘している方もいます)、ATFの量を調整します。

 

それからそのままATFのエア抜き作業をして、再度レベルゲージで量の確認、その後あまり負荷を掛けないようにしながら少し走ってエア抜き&点検、その後ドレンボルトからATFを抜いて新油を補充という作業を2回繰り返します。なので都合3回ATFを交換します。ドレンボルトから抜くだけだと3リットルも抜けないのですが、それでも最初に3.6リットルも古いATFを抜いたのでトータル8割以上は新油に入れ替わったと思います。

 

本当は2度目と3度目の交換の間に実走である程度距離を走行したほうがコスト的にもフラッシングの効果的にも良いかと思うのですが、今回はオーナー様がATFをペール缶で大量にお持ちなのと、作業の様子を見てもらってやり方を憶えていただいたので、しばらく走行してから4度目のATF交換をご自身で行っていただくということといたしました。まあ一日で3回交換したとしてもシャバシャバになった古いATFを使い続けるよりは圧倒的に良いですけれどね。

 

さて3回交換後。オーナー様のファーストインプレッションです。

 

「変速ショックが減った、それと各ギアの変速タイミングが500~800回転ほど早くなった」

 

変速タイミングはアクセルの踏み加減で変わるのでそのあたりに注意してもらいながら慎重に確認してもらったのですが、やはり今までより間違いなく早目に変速するようになっているとのこと。つまり油圧が復活したということですね。そして変速のフィールも格段に向上したということで、ほぼ一日掛りの作業でしたがATF交換を実施した効果が十分にあったという嬉しい結果となりました。

 

そんな感じで当店ではATFの交換も行っております。ただし金額は作業をやってみて実際に要した時間ですとか部品代など、それに社会情勢や当方の財政状況および気分や天気などによってめまぐるしく変化いたしますので基本的にメールやお電話、テレパシーなどでお問い合わせいただいてもお答えできません。ごめんなさい。まあトルコン太郎などでの作業やカー用品店等での作業の金額よりは確実に高くなりますので、安く交換したいという方はその段階でアウトです。それと部品も必要になりますので部品代先払い、ATF交換後のトラブルはノークレームノーリターンの上無保証無返金(笑)というひどいお店ですので、リスクがあっても他人と違った事をやりたいというような奇特な方以外は当店での作業はご遠慮いただくほうが無難かと思います。ていうかどれだけATF交換したくないんだよ、私(笑)

 

という感じで今回のATF交換は大成功です。そして当店初の大失敗を体験するのは、あなたの番かも知れない・・・なんちゃってね。まーぶっちゃけた話ATが滑っている以外の症状なら、最悪でも経験的には中のバルブボディだけ中古で交換すればたいてい直るんですけれどね。ただどこのショップもそれだと保証ができないのでやらないというだけで。ATF交換でも直らず、追加で中古バルブボディ交換の作業をしても、新品ATと交換するのと比べたら費用は圧倒的に安いですよ。

 

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