例えロイヤルパープルでも万能なオイル粘度なんて存在しない

突然ですが、最近エコカーとか省燃費とかがブームで低粘度低フリクションのオイルが大流行しています。

ロイヤルパープル製品にまったく恨みはないのですが、どうもあえて誤解を生むようなオイルの売り方をしているお店があるようなので個人的な意見を今回書きます。

ターボ車に0w-10!?

ターボ車にロイヤルパープルの0W-10レーシングオイルを薦めているという話を知って、愕然としました。
ロイヤルパープルの日本代理店さんのHPをリンクせていただきます。

ロイヤルパープルXPR

こちらを見ていただければわかるとおり、同じロイヤルパープルのレーシンググレードオイルにも何種類もあります。
実はこのサイトに載っていない粘度のオイルも存在していて、具体的には0W-8、0W-10(指定店のみに卸売り?今は設定無し?)、0W-20(これも指定店のみ?)、5W-20、0W-30、10W-40、10W-60、5W-40、5W-50と豊富な種類が用意されています。全て100%化学合成油でシナーレックという添加剤が配合されており、基本的には使用用途によってオイルを選択するためにこういうラインナップを取り揃えているのだと思います。ちなみに「XPR 0W-10」で検索するとたくさん出てきます。国内で販売しているところは多分ロイヤルパープル国内代理店さんから特別に0W-10を卸してもらっているのだと思います。

が、特別な用途に使うために特別に卸してもらっているのに、それを無視して一般ユーザーにまで一律「低フリクションの方が高性能」という売り方をするというのはかなり疑問を感じます。

全てにおいてダメなオイルというのは確かに存在しますが、されど同じように全てにおいて優れているオイルというのも存在しません。もし存在する(しかも同じメーカー同じ価格帯で)のなら、そのオイルだけ存在すれば済む事になってしまいます。

理想は低フリクションだが・・・

フリクションが少ないという事は確かに理想ではありますが、低フリクションを獲得する為にはかならず他の特性を犠牲にしています。そういう一長一短があるからこそ、XPRにもいろいろな粘度のオイルが用意されているというのは常識的に考えれば当たり前の事なのですが、それを無視してやれ何百馬力のターボエンジンでも大丈夫だったとか、全負荷で何キロ出しても大丈夫だったとか、エンジンを開けても傷ひとつなかったとか(クロスハッチもピカピカに消えていそうですが・・・)そういった結果だけをあげつらって「だから大丈夫」ということには絶対になりません。

そもそもロイヤルパープルの0W-10がそんなに完璧なオイルだとしたら、もっと多くのスポーツカーやチューニングカーでこのオイルが使われているはずです。メーカーも0W-10以外のラインナップをなくしてしまったほうが製造コストが下がって利益が上がるはずです。なのにそうはなっていない。

その事実を無視して、都合の良いところだけ宣伝してリスクの説明をせず0W-10を売りつける。あまりに無責任すぎます。

そりゃあ0W-10でもなんでも、乗り方ひとつで壊れたり壊れなかったりするでしょう。でもそういう低フリクションオイルを売るにしても、エンジンの暖気はちゃんとしてくださいとか、連続負荷は掛けないでくださいとか、オイル消費を注意してくださいとか、そういう説明を一体どのくらいきちんとしているのでしょうか。オイルが冷えていてもこれだけ低フリクションだと始動直後からフォンフォンと軽くエンジンが回るでしょうし、ユーザーとしては暖機せずとも軽く回るので調子が良いと思い込んでしまったりしてしまうのではないのかと心配になります。

もちろんそういう無知はユーザーの責任だと切り捨てることは簡単ですが、それがショップとして親身親切なのかは全く別の問題。逆にお客様をバカにして見下しているような感じさえします。

今はサイトから表記が消えましたが以前はオイル粘度によって使用用途の記載があって、0W-10に限って言えば「ドラッグバイク、小排気量レース、2ストMT、~400ps」とメーカーで推奨していました。5W-30で「ターボ車、中型排気量レース、~600ps、アルコール、メタノール」と、わざわざ書いてあります。なので少なくともターボ車のサーキット走行には5W-30位を薦めるべきだと思います。もっともその粘度になると前述の「フォンフォン」と軽く回る感じが0W-10に比べて弱まるのでしょうから、お客様に薦めてすぐに体感してもらえる度合いが減る、故にあえて0W-10を薦めているという思惑が見え隠れしているような気がするのは私だけでしょうか。

信用する相手は見極めることが重要

良いことばかりを言って悪い事を言わないショップやメカニック、フロントマンはいくら知識や技術があっても私としては信頼できません。特に都合の悪いお客様から電話が掛かってくると「俺はいないって言って!」という人とかですね。

ならば信頼できない人のうんちくを聞くよりも、もっと別の人に疑問をぶつけてみる!という事でロイヤルパープルオイルの日本総輸入元ウィズプロジェクトさんに突撃取材で電話を掛けてあれこれ質問をさせていただきました。するとなかなか興味深いことがお伺いできました。

もともとこのロイヤルパープルオイルは、プロストックとかドラッグレースの競技用バイクに0W-10を使用したところ、一気に0.6秒とか1秒近くタイムが向上したという実績により、日本にその名を知らしめたのがきっかけだったという事です。

ただ0W-10をサーキット走行に使うという点に付いては、油温の上昇が早い&油圧にも十分注意した上で使って欲しいという事でした。

HPに書いてあった「対応車種(馬力)」というのは主にドラッグレース用マシンの馬力のことで、通常の4輪に関しては「対応車種」(ターボ付きなら5W-30以上)を推奨している、ということです。

ただし0W-10を積極的に薦めている(いた?)某ショップについては、総販売元よりも0W-10に関してはデータやノウハウを持っているようで、今まで問題が起きたという話も聞いていないし、あとはショップの考え方次第だということのようです。でもターボ付き4輪に0W-10を入れているのは日本でもそこだけらしいとのお話でした。

それとロイヤルパープルのオイルの区分にモーターオイルとレーシングオイルという大まかな分けがあるのですが、これはやはりスポーツカーにはレーシングを入れて欲しいという事でした。特にレーシングだからといってライフが短いという事でもないとのことです。

それと0W-10の話に戻りますが、やわらかい分当然油温の上昇はかたいオイルより圧倒的に早くなります。なのでサーキットを走るのであれば対策のひとつとしてはセオリーどおりかたい番手に上げることもありますが、例えばオイルクーラーを2機掛けにするとか油圧計を付けて油圧がドロップしていないか確認しながら走るとか、物理的な対策を講じた上で安心して0W-10を使っていただくのが良いのではないか、というお話でした。

今回お話を伺って感じたのは、ロイヤルパープルのオイルは相当良さそうだという事です。機会があればぜひ一度使ってみたいと思います。
ただしターボなら0W-10ではなくまずは10W-40からですね。

信頼できないフロントマン、信頼できるフロントマン。そんな事を考えているとHKS北海道の元店長だった最上氏の事を思い出してちょっとノスタルジーに浸ってしまいました。私にとって最上氏はある意味師匠のような人でした。彼は今どうしているのでしょうか。ああいった有能なフロントマンを切ってしまうHKSという会社は本当に残念さんですね。作ってるパーツは良いのに。まあこれも個人的な感想なのですがね・・・

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