車が故障してもすぐに修理できない!? “整備難民”が急増しているワケ

youtubeで「自動車整備士が不足している」というニュースを見かけました。

動画の前半がニュースの解説なのですがこれは本当に深刻な問題で、整備士として働いている人も損している(損というより搾取されている?)し、整備を依頼するユーザーの人も不利益を被っているという切実な問題です。

派遣問題と根が一緒で、どこかに搾取している奴がいて、整備士もユーザーも搾取される側になってしまっているというのが一番の原因だと思います。

日本の行政や自動車業界にも責任があります。私見を述べるなら、車というのは本来使用者であるユーザー自身が整備点検するべきです。なのに今まで行政も業界も一丸となってユーザーに車を触らせないようにある意味甘やかし続けてきました。そのツケが今一気に押し寄せているのだと思います。

まずそもそも分解整備(いまは特定整備と言いますが)、これを国土交通省の認証を受けた整備工場でないと行えないという建前に大きな問題があります。自動車工場が認証を受けるためのコストはべらぼうなもので、その転嫁は働いている整備士の低賃金とユーザーの費用負担で賄われることとなるのです。分解整備と言っても私がよくやるタイミングベルトの交換は分解整備にならないのにたかがブレーキパッドの交換は分解整備になるわけでいったい何が何やら。ちょっとその辺にいる車が好きなおにーちゃんのやってるような作業が分解整備だ、認証工場でやらないと違法だと言われても困ってしまうのです。

そして自動車メーカーと国土交通省の癒着、これも大きな問題です。国土交通省は傘下に運輸支局を携え、運輸支局は各地域の整備振興会を携えています。この上から下への流れが宜しくない。例えば昔は自動車ユーザーが自分で整備をしようとした時には「整備解説書」なるものを自動車メーカーから入手出来ていたのですか今はなかなか手に入りません。そのかわり「ファイネス」というネットで整備手順が参照できる便利なシステムが普及してきました。ただしこのファイネス、利用するにあたって整備振興会に入会していなければなりません。そして入会のハードルがまた高い。私も一時期ファイネスを利用しようとあれこれ試行錯誤したのですが、結局無理でした。

さらに車検時の整備に「OBD点検」という項目が2022年から付け加えられました。これは何かというと自動車のコネクターに故障診断機を繋ぐと故障箇所が自動で判明するという便利な仕組みです。詳しく言うとOBD2規格という全世界共通のプロコトルがありまして、そのOBD2のコネクター経由で自動車のコンピューターにアクセスできるというものなのです。今の時代この診断機が無いとかなり整備が厳しいです。ところがまともに購入するとこの診断機、何十万円もするではないですか!私なんかが使っている簡易的なモノは1万円も出せば買えますが、現代の自動車は電子制御のかたまりですのでちゃんとした高価な診断機が無いと大変です。なのでどうしても診断機を使わないと設定できないような時はディーラーさんや診断機を持っている工場さんに「ちょっとお願い」といって貸してもらうのですが・・・話が逸れましたがこの高価な診断機も購入するにあたっては国土交通省から補助金が出るのですが、この通称スキャンツール補助金もなんと整備振興会傘下の自動車整備事業者にしか支給されません。

国がOBD点検を推進しているのにエンドユーザーにはその手段が無いというのもおかしな話ではないでしょうか。

このように自動車の整備を取り巻く環境は日々コスト高になっているのですが、何故かその現場を担っている整備士の労働環境は劣悪そのものです。時給に換算したら1000円にすらならないという話もよく耳にします。いくらコンピューターが故障を診断してくれる時代になったからといえ、実際に手を動かして修理するのは整備士の皆さんです。これは仮に世の中が全部電気自動車に変わったとしてもエンジンという部品がなくなるだけで、その他の部品は残ったままですから未来永劫変わらない事実です。

なので整備士が不足している、そしてその待遇も改善する気が無いというのなら、いっそのことエンドユーザーが自分で整備出来るように世の中を変えていけば良いんじゃないでしょうか!?

具体的にはファイネスの一般開示、そしてスキャンツールの廉価貸し出しです。それでもエンドユーザーには手に負えない作業が発生するのなら、その時は適正な価格でプロに作業を依頼するべきです。車検の時だけ「安く、安く」では通らない時代が来つつあるという現実を、自動車に関わる皆が共有しなければいけません。

まずは洗車とタイヤの空気圧チェック。そこから皆さん始めてみませんか?

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