北海道におけるスパイクタイヤの規制状況

なんだかネットを眺めているとかなりいい加減な知識で「スパイクタイヤは違反だ」だとか「禁止になっている!」とかヒステリーを起こしている人が大勢いるので、せっかくの機会ですから法律が制定されるにいたった経緯とかその後の条例、法律の流れなどを追いながら「スパイクタイヤは一律全面禁止ではない」ことを解説していきたいと思います。




まず最初のふるい分けが、125cc以下のバイクかそれ以外のバイク、自動車か?で話がまったく変わってきます。

125cc未満のバイクは原動機がついている自転車なので、冬になったら何も気にせずスパイクタイヤを履いて走っちゃってください。でも舗装路面だとスパイクタイヤは夏タイヤより滑るので、地域の実情に応じて安全なほうを選んでどうぞご自由に何でも履いてくださいませ。フリーダム!!

 

そして125cc以上のバイク及び車は色々と法規制があります。が、その前にどうしてスパイクタイヤが規制されるに至ったかを簡潔に書きます。

スパイクタイヤが道路を削ることで粉塵公害が深刻化し、昭和63年に総務省の公害等調整委員会と国内大手タイヤメーカーが協議した結果「スパイクタイヤの製造・販売自粛」という調停が成立しました。これは法律で「製造販売」が禁止されたわけではなく、あくまで自粛という名目で実は規制しましょうという意味です。行政に携わったことがない人にはわかり難い表現かも知れませんが、自粛と禁止ではその主体がまったく違うことをよく理解してください。

この目的は市場の流通からスパイクタイヤを無くすことで、自然とスパイクタイヤからスタッドレスタイヤへの移行を促すと意図したものです。市役所地下の公文書保管庫をあれこれひっくり返して、公文書の議事録だか委員の発言だかの関連文書を平成初期に読みました。

その流れと平行して平成元年には「北海道脱スパイクタイヤ推進条例」が制定されました。これはスパイクタイヤを使用してはいけないという期間を明確に定めて、その期間はスパイクタイヤ使用を禁止するという法律でした。なお冬期間に関してはスパイクをなるべく使用しないようにという努力義務になっています。そりゃあそうですよ、当時はまだまともな性能のスタッドレスタイヤがなく、北国では皆スパイクタイヤを履いているのに、いきなり次のシーズンから全員スタッドレスタイヤにしなさいなんて強制的な立法をしたら大混乱が起きるのはわかりきっていることですからね。実際、ようやくまともに積雪路面を走れるようになったスタッドレスタイヤはブリヂストンのブリザックPM-30あたりからですから。懐かしいですね、PM-30。そのころの私は毎年モデルチェンジするスタッドレスの中から「これは」というのを毎年2本ずつ買い換えてその進化や性能、特性の違いをつぶさにレビューしていたものです。もちろんスパイクタイヤ(フルピン)も所有していたので適宜履き替えて使い分けしていました。なにせ超がつくほどの雪道マニアですから。

平成2年には「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」を国が制定しました。この法律で初めて舗装道路の積雪又は凍結の状態にない部分でスパイクタイヤを使用してはならないと罰則が定められました。しかとこの法律は基本法であって、地域の実態などは各都道府県で調査をしてそれぞれ独自で条例を制定したり、この法律の中で国が定めている指定地域に過不足があれば「ここを追加して」「ここは削除して」と各知事は要望することができるなど色々書いてはありますが、「スパイクタイヤ一律禁止」なんて言葉は一言もありません。そしてその数年後にブリヂストンから北海道限定モデルのスタッドレスタイヤ「MZ-01」や「MZ-03」などが次々と発売され、そのミラーバーン性能の高さから「スタッドレスならブリヂストン最強(価格も最強)」というのが北海道民ドライバー間での常識として定着しました。

また北海道条例では平成21年に「北海道脱スパイクタイヤ推進条例」が「北海道スパイクタイヤ対策条例」へと改正されました。この条例もスパイク規制期間と抑制期間を定め、抑制期間(冬季間)には「(スパイクタイヤを装着した車を)運行しないように、又は運行させないように努めなければならない。」と、明確に「努力義務」として定義されています。

以上二種類の法律条令にて北海道におけるスパイクタイヤの使用については規制されているのですが、どちらも根本的には積雪凍結路面以外でのスパイクタイヤ使用を罰則付きで禁止しているだけであり、一律全面禁止なんて法律はどこにも存在していません。

まあこんなに法律、条令を細かく理解しなくても「スパイクタイヤって禁止になったからもう売っていないんでしょ?」という認識で特に問題はありません。ただしそれは自分の行動についての規範としてであって、他人を叩くためのポリコレ棒として使いたいのであればきちんと当時の社会事情や法律の趣旨、規制内容まできちんと把握しておく必要がありますね。

とまあ色々書きましたが、今でも私の心の中の本音としては「スタッドレスタイヤ?はぁ?ゴムで氷に歯が立つわけないだろう。スパイクタイヤ最強に決まってんじゃん!」です(笑)。

4WDやFFならスタッドレスタイヤでもドライバーの技量が高ければ突破できない道路はほぼ存在しませんが(もし幹線道路で突破できないほど積雪したらすぐに通行止めになります)、FRだけはどうしてもちょっとした段差や上り坂でスタックしちゃうんですよね。

特に北海道では4WD信仰が根強く、FFでさえ冬道を走るのは無理という人まで出現している始末です。FFでもアクセルを「踏むべきときには目いっぱい踏む」、ブレーキを「踏むべきでない時には絶対に踏まない」、このふたつを徹底するだけでたいてい大丈夫です。ましてや今は電子デバイスも普及しているので、なおのことドライバーの前に進む意思が踏破力の差になっていると言っても過言ではないでしょう。まあへたっぴさんは4WDでも何でも道路からポテンと落ちるので何に乗っても同じですヨ。はい。

 

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