スーパーGTラウンド2富士、メインストレートでまたしても事故

先日フィガロが大破したばかりの富士スピードウェイのメインストレートで、またしても大クラッシュが発生した。2022年5月4日に開催されたスーパーGT選手権の第二戦富士で発生したその事故は、レースとは一体何なのか、レーサーの資質とは何かを考えさせられるものであった。動画2分27秒からのシーンである。

トラブルでコース右端を明らかにスロー走行していたGT300クラスのマシンに対してGT500クラス先頭集団が後方から接近。先頭のデンソーサードスープラはGT300マシンをギリギリで左に交わしたものの、その直後でスリップストリームに入っていたクラフトスポーツZがGT300マシンに軽く接触。それでも追突を回避するためにステアリングを左に切ったZはコントロールを失いホームストレート左壁に衝突、けが人を出す大クラッシュとなった。

幸いなことにドライバー、観客とも怪我は軽症で済んだのだが、一歩間違えれば死亡事故に発展しかねない大クラッシュであった。

この事故を単なるレーシングアクシデントだと論評する人も多いが、果たしてそれで済ませて良いものだろうか。

まずGT500グループの先頭集団3台の先頭であったデンソーサードスープラ、この車がコース左端を走らずわざわざ右端ギリギリに寄って、直前でGT300クラスのマシンを交わす必要性があったのかどうか。GT300のアルナージュMC86はマシントラブルで明らかにスローダウンしていた。それを一番確実に目視できていたのは先頭を走っていたデンソーサードスープラだ。スローダウン走行中の車両のスリップストリームを使うことにいったいどれほどの意味があったのだろうか?そしてそれは後続車両を危険に晒すほどの価値があったのだろうか?

デンソーサードスープラが低速車両のスリップストリームを使わないという常識的な選択をしていればコース右端1台分は開けて直進していただろうし、それであればクラフトスポーツZがあわや追突という危険は発生していなかった。

またクラフトスポーツZが左ハンドル車であったことも不運の一つだ。デンソーサードスープラのスリップに吸い寄せられたまさしくその瞬間に右イン側に低速車両が現れたかたちになった。

ここで問いたいことは一つ。デンソーサードスープラのドライバーの意識にわずかでも「スローダウンしているGT300マシンを使って後続のクラフトスポーツZをブロックしてやろう」という気持ちがあったかなかったか、ただそれだけだ。

レースとはスポーツマンシップに則って行われるものである。しかも命を賭けて競い合っているモータースポーツという場において、もしも悪意をもって挑んでいる者がいたとすればそれは断じて許されない。

綺麗事のようだがレースとは一人で行う競技ではない以上ただ勝てば良いというものではない。フェアプレー精神のない者はやがてシートを失うだろう。なぜならレースとは一人で成立するものではなく、他の参加者に対してリスペクトを持ち参加者全員で成立させるものだからだ。明文化されたレギュレーション以前にスポーツマンシップやフェアプレー精神が必要だというのはあらためて語るまでもない共通認識だと思うのだが、違うのであろうか?

デンソーサードスープラのドライバーは自分自身の言葉で「悪意は全くなかった」と大きく胸をはって断言出来るのか。断言できるなら良し、ただし「李下に冠を正さず」ということわざもある。他人から悪意を疑われるようなドライビングは今後改めてもらいたいものである。

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