プリウス(というかトヨタハイブリッド)は暴走する?可能性はゼロではない

書くか書かないか相当悩みましたが、最近プリウス(その他トヨタハイブリッドシステム搭載車含む)に関する意図的なミスリードが増えているので、あらためて「みんなが知らないプリウスの真実」を記して行こうと思います。

プリウスのブレーキは単なるスイッチ(センサー)である

恐ろしいことにプリウスのブレーキペダルは、ブレーキの油圧マスターシリンダーとまったく繋がっていません。ドライブ・バイ・ワイヤといって、ドライバーがどれくらいブレーキペダルを踏み込んだかをセンサーが感知して、その踏力に応じてコンピューターが回生ブレーキで発電させたり、または油圧ポンプのソレノイドを作動させてブレーキラインに圧力を掛けたりと複合的に制御しています。

これを言うと「いや、プリウスだってブレーキペダルを踏んだらぐにゅーっとブレーキを効かせている踏み応えがあるぞ!」とおっしゃる方がいます。でもそれはただ単に「ぐにゅー」となるためだけの部品がついているだけで、油圧にはまったく繋がっていません。「ぐにゅー」とならないとドライバーに不安を与えるので、そうなるようにしているだけなのです。

一応補足するとプリウスには三重の安全装置が組み込まれており、完全に電源を喪失したときの最終非常手段モードとして、ブレーキのマスターシリンダーとブレーキペダルが直結になるシステムが組み込まれています。ですがそれが発動する条件というのは全電源喪失、つまりメーターパネルの表示が消える、ライトも消える、カーナビも何もかも消えるという超異常事態が発生しないとそのモードにはなりません。そして私の知る限り走行中そのモードに突入したケースというのは聞いたことがありません。このセーフティは巷で噂されているプリウス暴走事件に対してはまったく防止効果がないのです。

プリウスのアクセルも単なるスイッチ(センサー)である

プリウスのアクセルペダルもブレーキ同様単なるセンサーです。スロットルとは直結していません。そして普通のガソリン自動車と違うのは、ガソリン自動車は単純に電子的にスロットルを開ける/閉じるの制御だけを行っているのに対して、プリウスは状況に応じてモーターだけを駆動したり、エンジンを始動してエンジンの力で加速したりと遥かに複雑な制御を行っているという点です。

プリウスのシフトレバーも単なるスイッチ(センサー)である

わかりにくいことで有名なプリウスのシフトレバーですが、これも昔のオートマチック車とは違って完全にスイッチです。なので走行中にリバースに入れようが、パーキングスイッチを押そうが、ピーっとエラー音がなってニュートラルに入るだけです。

電子機器は誤作動するものである

航空機にはフライ・バイ・ワイヤという機能が搭載されています。車のドライブ・バイ・ワイヤと同じですべてデジタル制御で制御されています。そのフライバイワイヤは三重のバックアップと最後の手段として直接制御のセーフティが設けられています。それでもまれに航空機の事故は発生しています。いくらセーフティを多段化してもトラブルはゼロにはならないですし、制御が複雑化すればするほど想定外のトラブルは必ず発生します。ブレーキを油圧で、アクセルをスロットルワイヤーで直接人間が操作していた時代の車と、ドライブ・バイ・ワイヤで走っている車はまったくの別物と言っても良いかもしれません。

EDRは万能ではない

EDRとはイベントデータレコーダーの略で、エアバッグが動作した際にその五秒前までの記録を保存するコンピューターです。

記録する内容は多岐にわたっていて、車速、衝撃G、アクセル開度、ブレーキ踏力、シフト位置などなど詳細なデータが残ります。

それを根拠に事故時に「アクセルを踏んでいた」「ブレーキを踏んでいなかった」などの証拠とするケースは多いです。

ただしドライブ・バイ・ワイヤの車、特にプリウスやTHSⅡの車ではそうかんたんに話は進みません。EDRが監視しているのはあくまでも車両側からのアウトプット、つまりは車のコンピューターが総合的に判断した結果としての出力を記録しているだけです。インプット、つまりドライバーがどれだけアクセルペダルやブレーキペダルを踏んでいたかを直接監視しているわけではありません。ここにドライブ・バイ・ワイヤの欠点があります。

昔の車であればスロットルポジションセンサが直接アクセル開度を読んでいたのでインプットを記録していたことになります。ブレーキはバイワイヤではなくマスターシリンダとペダルが直結でしたし、マスターシリンダの油圧も二重化されていたのでブレーキが完全に効かなくなるなんてことはよほどのことがない限り起こりえませんでした。

EDRは前述したとおりパワーマネージメントコントロールコンピュータやブレーキコンピュータの演算結果を記録するだけですので、足元にドライブレコーダーでも装着していない限り本当にアクセルやブレーキを踏んでいたのかは証明のしようがありません。

あなたのスマホは誤作動したことがありませんか?

ハイブリッドカーに代表されるドライブ・バイ・ワイヤの自動車は、クルマというよりもはや電化製品というべき代物です。ブレーキランプひとつとっても、最近の車は急制動をしたときに後続の車両に注意を促すためハザードランプが点滅したり、ブレーキランプそのものが点滅したりするというように何らかの電子的制御が介入しています。スマホやパソコンに代表されるように、ハイテクデバイスは誤作動するものです。それでもあなたのハイブリッドカーは誤作動しないと言い切れますか?

最後に

プリウスを始めとしたハイブリッドカーで発生した事故の訴訟が大詰めを迎えています。

私個人の意見として、池袋暴走事故は飯塚被告のブレーキとアクセルの踏み間違えの可能性が99%だと思います。

ですが福岡のタクシー原三信病院突入事故は、プリウスの暴走の可能性があると思っています。

レクサス暴走事件の石川達紘被告の件については、ブレーキホールド機能・電動パーキングブレーキの制御とパワーマネージメントコントロールコンピュータの制御がコンフリクトした結果の車両暴走ではないかと考えています。詳しくはこの文春オンラインのリンクをご覧ください。

ハイブリッドカーではありませんがアメリカで多発したスロットルバイワイヤ車両の暴走事故も、一部は確かにフロアマットが引っかかっていただけでしょうがそれでは説明できない事故があまりにも多すぎます。

いずれにしても「自分が運転して動かす車」のが本来の自動車であって、「自動で何でもやってくれる車」のほうの自動車には極力乗りたくないものです。機械を過信してはいけません。

 

プリウス(というかトヨタハイブリッド)は暴走する?可能性はゼロではない” に対して2件のコメントがあります。

  1. きよかず より:

    最後の「「自動で何でもやってくれる車」のほうの自動車には極力乗りたくない」って部分、とても共感します。
    個人的にはABS程度の、あくまでも人間の操作の補助くらいが許容範囲ですね。

    先日、数年後にはエンジン付き自動車の製造をやめることを目標とする報道を聞いて愕然としました。

    ケインさんのおっしゃる通り、自動車が家電化していくのは止められない雰囲気ですね。寂しい限りです。

  2. unlimitedracingjapan より:

    >>きよかずさん
    コメントありがとうございます。
    そうですね、私もABSくらいが許容範囲ですかね。
    でも最近の車ってABS装着が前提になっているから前後ブレーキの油圧差がないんですよ。ABSが万が一トラブル起こしたらめちゃくちゃリアが効きすぎるブレーキになるという・・・
    Zで言えばZ32までは物理的にフロント寄りの油圧配分していたのですが、Z33からはそれがナシに。なんでもハイテクデバイスありきのクルマづくりになるのは恐ろしいです。
    エンジン付き自動車はまだ大丈夫だと思いますよ。トヨタが否定的ですし、北国ではEVなんか使い物にならないし途上国ではまだまだエンジン車両が必要とされていますからね。

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