GRヤリスのRCに等速トランスファーは必要ない

ちょうど1年前に「GRヤリスが失敗する理由」という記事を書きましたが、この1年でGRヤリスが失敗しなくなるような変化がいろいろ出てきました。今回はそのあたりについて書いていこうと思います。

※このあとも最新のGRヤリス情報を多数掲載していますので下記リンクからチェック!http://www.unlimitedracingjapan.com/blog/category/grヤリス/

前回の記事では失敗する一番の理由に「価格が高い」を挙げました。RZハイパフォーマンスファーストエディションで456万円、オプションをあれこれ付ければ500万円に到達するというのがその理由でした。

ですが現在は競技ベースのRCグレードが330万円というバーゲンプライスで発売されています。はっきり言って330万円とは安いと言わざるを得ません。

ただし素のRCはエアコンレス、前後LSDも無しなのでそれではせっかくのGRヤリスを満足に味わうことができません。なのでその2点だけは装着することして金額を計算してみることにします。

まずエアコンですがこれはメーカーオプションで132000円です。

次に前後機械式LSD、これはGRパーツということでディーラーオプションとして選択できます。これが387497円。約38万8千円です。そして取り付けに要する作業時間が20時間と明示されています。この20時間に対して仮に1時間あたり工賃を7000円として計算すると140000円が加算されます。つまりLSD取り付けに要する費用は総額で約528000円となります。

車体330万円+エアコン13.2万円+機械式LSD前後52.8万円=396万円。

偶然なのかどうなのかわかりませんが、トルセンLSD無しのRZファーストエディションとほぼ同じ価格となります。これなら文句なしにRCのほうが買いです。

さて。そこで悩みとして出てくるのがRCのみにオプション設定されている等速トランスファーを付けるか付けないかという点です。そもそも等速トランスファーとは一体何だ?という解説をするためには、GRヤリスのフルタイム4WD機構について理解しておく必要があります。

基本GRヤリスはFFベースのパートタイム4WDです。通常のカップリングを配する形式のパートタイム4WDでは前後の回転に差が発生したときに、具体的にはフロントが空転したときに初めてリアに駆動が掛かる仕組みになっています。

ところがGRヤリスの場合フロントとリアの減速比をあえて違うものにして、逆に常にリアが若干過回転しているような状況を作り出しています。これを擬似過回転とでも呼ぶとしますが、このおかげで常に4輪にトルクが掛かるフルタイム4WD化を達成しています。ちなみにフロントのファイナルは1~4速までが3.941、リアのファイナルは2.277ですが、カップリングへの負荷を掛けないたフロントに配されているトランスファーにて前後回転差を約0.7%にまで落としています。そしてカップリングの作動制限を電子制御化することで常に4WD(フルタイム4WD)でありながらも、そのカップリングの滑り具合を微調整することで前後のトルク配分をある程度自由に変更できるようにしています。このアクティブトルクスプリット4WDシステムこそがGRヤリス最大の武器とも言えます。

ところが等速トランスファーを追加すると、前後を等速化することで0.7%の疑似過回転が無くなってしまいます。するとどうなるかというと、本来スポーツモードでのトルク配分は30:70だったものが最大でも50:50に制限されてしまいます。これはトヨタ開発に確認しましたので間違いありません。等速なのですからトルクも基本的には等分に配分されるということです。

他のモードは基本50:50以下のトルク配分なのでおそらく電子制御カップリングの制御でうまく帳尻を合わせているのだと思いますが、いずれにしても等速トランスファーはアクティブトルクスプリット4WDシステムの優位性を自ら放棄しているような気がしてなりません。もちろんダートやラリーなどでしかこの車を使わない、前後トルク配分は50:50から変更する気がない、むしろフロント寄りにしかしない、というのであれば等速トランスファを装着することである程度カップリングの負担を減らすという効果があるのかもしれませんが、逆に言うとそれくらいしかメリットが思いつきません。正直に言って、等速トランスファーの有り無しだけで2台試乗比較しないとどの程度メリットがあるのか見当すらつきません。まあわざわざオプションで用意されているくらいですから、もしかしたら体感的にものすごく差があるのかもしれませんが・・・

私個人の意見としてはRZハイパフォーマンスファーストエディションにオプションでも用意されていない等速トランスファーはあまり必要ないのでは?という意見です。ただし等速トランスファー自体は55000円とそれほど高価なパーツではありませんので、装着するしないは皆さん大いに悩んでください(笑)

RCグレードが発売されたことで一気にお買い得感が増したGRヤリス、今後の動向を注意深く見守っていきたいと思います。

 

GRヤリスのRCに等速トランスファーは必要ない” に対して2件のコメントがあります。

  1. Coupe-9 より:

    そうですね、普通に乗るんでしたら等速トランスファーは要らないと思います
    また一般的な楽しいドライブも出来なくなると思います

    ではなぜオプションで用意があるのか、全開走行を長くする方向きですね
    例えばジェイテクトのITCCの温度が上がり保護回路が働きFFになってしまう方
    或いは1秒でも速いタイムを出したい方向きです、パートタイム4駆と同じく
    内輪差で、コーナーは50:50でもオーバーステア気味にはなります

  2. unlimitedracingjapan より:

    >>Coupe-9さん
    コメントありがとうございます。ITCCの過熱に関しては相当ガンガン走らないとエラーにならないと聞き及んでおります。通常のサーキット走行会程度なら大丈夫ではないかというのが私の見解です。それよりもトランスファーのオイル容量が少ないのが問題のようです。実際にトランスファーが破損した例もあり、トランスファー冷却用にGRブランドからダクト付きアンダーカバーが発売されています(焼け石に水だと思うのですが・・・)。

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